GOLDFRAPP: HEAD FIRST


みんな大好き『ウィッカーマン』。ニコラス・ケイジ版の方はオリジナル版と別の意味で怪作すぎて、あれはあれで素晴らしいと思うのですが、とりあえずみんなが大好きなのはオリジナル版の方だと思います。
でもって、クリストファー・リーの女装とかブリット・エクランドの裸踊りとか野外で乱交してる人達とか、もう魅力だらけの『ウィッカーマン』を彩る音楽もまた最高なのでした。サントラ盤CDが出ているので、音楽だけでも日々楽しめます。
GOLDFRAPPの前作『SEVENTH TREE』(08)は、ポピュラー・ミュージックが『ウィッカーマン』サントラの世界観に接近したような作品でした。なんといっても、宣材写真からしてこれですよ。

GOLDFRAPPはアルバムごとに音楽性が異なっていて、前々作『SUPERNATURE』(05)はエレクトリック・ダンス・ポップでしたが、この『SEVENTH TREE』はペイガン女声ソフト・フォーク・ロックだったのでした。多少エレクトロニクスは使われていますが、あくまでアリソン・ゴールドフラップの歌声と生楽器を生かすためです。「Little Bird」イントロはメロトロン風だったりもします。ケイト・ブッシュCOCTEAU TWINS、あるいはMELLOW CANDLEと比較されそうですが、夢の中に出てくる童謡っぽい調べが秀逸です。
前作がそんな傑作だったので、新作に期待していたら、『HEAD FIRST』はエレクトロニック・ダンス・ポップに戻っていました。全然ペイガン色はないです。でも第1弾シングル「Rocket」を筆頭に、とにかく曲が良いです。アンフェアなほどにポップで、歌えて、踊れます。
あ、「I Wanna Life」のコーラスの「too much, too little, too late to want to dance」はジョニー・マティス&デニース・ウィリアムスの「Too Much, Too Little, Too Late」(邦題「涙のデュエット」。SILVER SUNがカヴァー)をちょっと捻った引用ですよね。
しかしこの『HEAD FIRST』、現時点では日本盤CDリリース予定がないようで、とても残念です。LADY GAGAよりこっちの方がいいのに。
ところでリメイク版『ウィッカーマン』最大のハイライトのひとつは、ニコラス・ケイジが婆さんをグーで殴るところでした。
ファビュラス・ムーラやメイ・ヤングの例を挙げるまでもなく、「婆さんが戦う」というだけでウケてしまうのは、万国共通なのでありましょうか。ビッグ・ダディ&サミー・リー(佐山聡)という黄金タッグの試合ですらも、このビデオの1分22秒・1分54秒ぐらいに出てくる観客の婆さんに目を奪われてしまいます。戦ってはいませんが。
いかりや長介青島幸男、ジョン・ディーコンが婆さんに扮したのも納得ですね。