突撃


世の中には聴いていない名作アルバムとか見ていない名作映画は星の数ほどあるわけですが、今頃になってDVDで『突撃』を見ました。1957年公開。スタンリー・キューブリック監督。
第1次世界大戦中のフランス軍の話で、偉い人たちの出世欲や保身のために兵士たちがガンガン死んだり処刑されたりします。カーク・ダグラスは大佐ですが、どっちかといえば下の兵士たちの味方です。将校たちの尻ぬぐいでスケープゴートにされた兵士たちを軍法会議で弁護しますが、ダラ幹(ダラけた幹部)たちは聞き入れようとしません。あまつさえカーク・ダグラスが自分の出世のために将校の足を引っ張っていると思い込んで、将軍が失脚したら「やー君もうまく立ち回ったねー」と言ったりします。
第1次大戦中のフランスといえば『西部戦線異状なし』もそうですが、この作品もまた戦争の悲惨さ虚無さを訴えています。『Paths Of Glory』という原題にも皮肉が込められています。1916年2〜12月のヴェルダンの戦いで独仏あわせて70万人、1917年4〜10月の第二次エーヌの戦いで30万人の死傷者を出すなど、えらく甚大な被害をこうむったのでした。
しかし下っぱの兵士たちも当然死にたくないので、「最前線はノンメルシー」と3万人が勝手に後方に引き返してしまうという出来事もあったそうです。
ところでシェルショック/PTSD精神疾患として注目されるようになったのは第1次大戦後で、それまでは戦闘による外傷が原因だと思われていたそうです。『突撃』にも防空壕の中でこんな反応とかこんな反応をする人が出てきます。やっぱり戦争は良くないですね!
映画に話を戻して、最後にフランスの兵士たちが自陣にある酒場でドイツ人の女捕虜をステージに上げて「姉ちゃんなんか歌えー」と歌わせるのですが、途中から全員で泣きながらメロディを口ずさみます。『フルメタル・ジャケット』も最後、ミッキーマウスの歌で締めくくっていましたね。
キューブリックDVDコレクターズボックスとかには収録されていませんが、たいへん素晴らしかったです。