DRAGONFORCE / ALL THAT REMAINS @ZEPP東京
もう何度目か数えるのも面倒臭い来日。えーと7回目?最初はお笑いおもしろメタル扱いだったのが、猪突猛進なまでにグイグイ突っ込む勢いはそのまま、いつしか大きくなっていました。
2001年3月、All About Japan向けに書いたやつ。ウェブ媒体で、めでたく円満解雇になりました。当時はまだDRAGONHEARTを名乗っていました。「謎の東洋人ギタリスト、ハーマン"シュレッド"リー」...。
●究極の恥ずかしメタル? 〜
ドラゴンハート
昨年12月、ロブ・ハルフォードのロンドン公演。同月下旬のジャパン・ツアーに先駆けてロブのステージを体験できるということで、たまたまロンドンにいた僕は会場の『アストリア2』まで足を運ぶことにした。
この日サポート・アクトとして予定されていたオーヴァーキルがどういう理由でか中止。その代役として急遽抜擢されたのが無名バンド、ドラゴンハートだった。
その名前すら聞いたことがなく、ただの若手バンドであろうという以外何も予備知識がなかった僕は思い切りひっくり返ることになる。何と彼らは超伝統様式美炸裂のメロディック・スピード・シンフォニック・パワー・メタル・バンドだったのだ!ヘヴィなリフ、メロディアスに歌い上げるヴォーカル、ドラマチックな曲展開、謎の東洋人ギタリストの天高く舞い上がる速弾き。そのクサさ・大仰さ・メタオタ臭に満ちたサウンドはラプソディ、ラビリンス、ソナタ・アークティカといった一連の"恥ずかし系"メタル・バンドを超えてしまったといっていい。
さらに凄かったのが彼らのステージ・パフォーマンスである。曲を紹介するときにも「次の曲はディサイプルズ・オブ・バビロ〜〜ン!」と途中から裏声で絶叫ハイトーンを聞かせ、観客がまったく曲を知らないのにも関わらず「オーオオォ〜〜オ」とこれまた勇者の雄叫びのようなメロディを歌わせようとする。もう笑っちゃうクサさなのだが、この時はあまりのドラマチックなステージに圧倒されてへたへたと地べたに平伏すしかなかった。
帰国後インターネット上で彼らの公式サイトを探しあてると、その全貌が見えてきた。ドラゴンハートはロンドン出身の5人組。現在は5曲入りデモテープが発表されており、その全曲を公式サイトで聴くことが出来る。テンやマグナムなどのメロディアスAORロック・バンドこそ地道に活動しているものの、現在のイギリスはこの手のメロディック・スピード・メタル不毛の地。僕自身も彼らがイタリーかフィンランド出身ではないかと考えていた。それが大英帝国、しかも帝都ロンドン!イギリスで誕生したヘヴィ・メタルがヨーロッパに渡って極端に大仰なメロディック・スピード・メタルとなり、生まれ故郷に還ってきたのがドラゴンハートだと言えるだろう。なお前述の謎の東洋人ギタリスト、ハーマン"シュレッド"リーは香港出身。親の仕事で少年時代にイギリスに移住してきたのだとか。
さらに大きな驚きだったのは、彼らがなんと10月にライヴ・デビューを果たしたばかりのド新人バンドだということ。それなのに(良くも悪くも)あれだけのインパクトを持つ音楽性を確立しているのは賞賛に値する。
この記事を読んだ人はとにかく彼らの公式サイトを訪れ、「Valley Of The Damned」「Black Winter Night」に耳を傾けて欲しい。恥ずかし系メロスピ・ファンならもう涙が止まらないだろう。そして否メタル派のパンク/ハードコア・キッズならもう大爆笑が止まらないだろう。とにかくあらゆる意味でスゴイのだ。
目をつぶると、ドラゴンハートが初来日公演を果たす姿が見えてくる。そのとき黒Tシャツとケミカルウォッシュのジーンズに身を包んだメタルキッズ(もちろん全員童貞)が拳を突き上げ、会場にはじゃんがらラーメンの匂いが立ち込めるだろう。そんな日が来るのは決して遠い将来ではあるまい。恐るべしドラゴンハート!
続いて2004年2月、amazon.co.jp向けに書いたやつ。ウェブ媒体で、めでたく円満解雇になりました。商品紹介でおちょくってどうするんだという気もします。
イギリスのメロディック・スピード・メタル・バンドによる2003年のデビュー作である。疾走感あふれる超音速サウンド、ドラマチックかつアグレッシヴな曲展開、歌わずにいられない勇壮なコーラス、香港出身のヘルマン・リによる超絶テクニカル・ギターと、思わず落涙ガッツポーズのメタル絵巻。 2004年1月の初来日公演ではいろいろな意味でメタル・キッズの度胆を抜いた彼らの鋼鉄英雄伝の序章がこのアルバムだ。大英帝国出身でありながら、ほのかな秋葉原臭も漂わせる勇者“ドラゴンフォース”。ありがとう、そして伝説へ…。(山崎智之)