CONLON NANCARROW: STUDIES FOR PLAYER PIANO

CONLON NANCARROW

SPARKSのロン・メエルが曲を書くとき、人間が歌うことを前提とせずに書いたため、シンガーのラッセル・メエルが無理してファルセットで歌わねばならず、それがSPARKSの唯一無比の音楽性を確立させることになったというのはよく知られた逸話です。最近ではストリングスも実際に演奏することを前提としておらず、アレンジャーから文句を言われたそうです。
それと同様に、人間が演奏することを前提とせずにピアノ曲を書いていたのがコンロン・ナンカロウ(1912-1997)です。この人が書いた曲はあまりに速くて複雑なので人間が弾くことが出来ず、プレイヤー・ピアノ(パンチングを使った自動演奏ピアノ)を用いて演奏していました。まあ、最初から自動演奏を前提としているという点でSPARKSとは大きく異なりますが。
で、ナンカロウの自動演奏ピアノ作品といえばCD5枚組『STUDIES FOR PLAYER PIANO』が定番でしたが、なんかオモチャっぽい音色と演奏で、しょせん「本物のピアノを使ったオルゴール」のネタ音楽かと思っていたわけです。
でも最近ベーゼンドルファーのグランド・ピアノを用いた音源集が出て、聴いてみたら、これが楽曲の繊細さと重厚さを見事に表現していて、目からウンコが落ちました。ピアノの音の大群が凄まじい速度で脳内を駆けめぐり、全身に痛痒感が走ります。よくロック・ギターでは「音数ばっかり多くても無意味」とか言われますが、やっぱり音数が多いのはひとつの魅力ですよ。ティアゴ・デラ・ヴェガマンセー。1秒に38音。
第1集第2集を聴いて、今年初めに出た第3集も注文したところ。
この『Player Piano』シリーズではナンカロウ以外にもショパンの曲を1900年頃の名ピアニストが演奏したのをプレイヤー・ピアノで再現したというCDも出ていますが、果たしてそんなことは可能なのでしょうか?興味があります。