WISCONSIN DEATH TRIP

EARTHの『HEX: OR PRINTING IN THE INFERNAL METHOD』、聴けば聴くほどにズブズブ深みにはまっていきます。
アメリカーナの土着的な闇と歪みに静かに分け入っていく感触、何かに似ているな何だったけなと思いながら数ヶ月。『ダークサイド・オブ・ロック2』のSTATIC X原稿を書いているとき、あ、あの感触は『WISCONSIN DEATH TRIP』ではないか!と気がつきました。
賢明なる皆さんはご存じかと思いますが、『WISCONSIN DEATH TRIP』はMichael Lesy(レシーだかリージーだか)という人が1890〜1910年ウィスコンシン州ブラック・リヴァー・フォールズ近辺で起こった出来事の新聞記事と当時のスナップ写真を集めた本です。
一見静かな田舎町ですが、誌面を飾るのは殺人、発狂、子殺し、自殺、ジフテリアチフスなどの疫病。
何気ないスナップ写真に写る人々の表情にも、重く暗い呪縛がのしかかっているのが窺えます。
何故そんなに事件が多発したのか?という注釈は最小限に留め、淡々と記事と写真を並べているのが余韻を残します。
この本、10年ぐらい前に本屋に置いてあったのを見てペラペラ立ち読みして、エグイ死体写真とかがないため当時は買わなかったのですが、ずっと脳裏に染みついていました。
今になってようやく購入、じっくり読んでいるのですが、かなり精神的に来るものがあります。
なお、この『WISCONSIN DEATH TRIP』は1999年にジェイムズ・マーシュ監督で映画化されており、輸入DVDで観ることが出来ます。
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映画版は窓ガラス割りの常習犯で100回以上投獄経験のあるマリー・スウィーニーを大きくフィーチュアしたり、カラーで現代のウィスコンシンの描写を加えるなど(ジェフリー・ダーマーのアパートメント213もウィスコンシン州ミルウォーキー)、本よりも動きを重視した作りですが、やはり淡々とアメリカの田舎町の闇を描いています。
本は英語でかなりの分量なので、まず映画版から入っていくのも良いかも知れません。
トビー・フーパーの映画『悪魔のいけにえ』やジャック・ケッチャムの小説『オフシーズン』のような派手さはないのですが、ウィリアム・フォークナーのヨクナパトーファ郡に垂れ込める暗雲を感じさせるもので、アメリカの田舎は怖いという思いを新たにしました。
ところでSTATIC Xのデビュー・アルバム『WISCONSIN DEATH TRIP』は超かっこいいですね。
アルバムを追うごとに尻すぼみになってしまっているのが残念です。