VARIOUS ARTISTS『THE STUFF THAT DREAMS ARE MADE OF』

昨日買った"幻のブルース・コンピレーション"CD『サン・ハウス 幻のSP盤音源発見!(仮題)』を聴きました。
1920〜30年代ブルースのとにかく地獄のようにレアなSP(世界に一、二枚しか存在が確認されていないものが大半)の音源を集めた二枚組です。
邦題はそのまんまサン・ハウスの幻の音源をウリにしていますが、トミー・ジョンソン、スリーピー・ジョン・エステス、メンフィス・ミニーなど知名度のあるブルースメンの死ぬほど超絶レアなトラックも収録しています。
まあ僕の場合、彼らの既発全音源を押さえているわけでもないので(というか聴いてないのもいっぱいある)、このコンピレーションの真の重要性は判らないのですが、戦前ブルースとフィドル・バンドのコンピレーションとして楽しく聴くことが出来ました。
かなりボロボロのSPからも盤起こししているそうですが、うまく音源を修復していて、聴き苦しいことはありません。
各音源のレコーディング・データやカタログ番号が欠けているのはマイナスかも知れないけど、どうせ本物のSPを手にすることはないだろうしなあ。
音源のレア度もさながら、そんなレア盤を血眼になって追い求めるコレクターの気違いぶりをCDのコンセプトにしていて、ロバート・クラムによる表ジャケットとブックレット内の漫画、そして監修のリチャード・ネヴィンズによるライナーノーツがコレクターの心情を面白おかしく描写しています。
コレクターのアホぶりを描いたライナーノーツは『ビニール・ジャンキーズ』の新章といってもおかしくない内容でした。
クラムはその『ビニール・ジャンキーズ』でも書かれているとおり、黒人居住区の家を一軒一軒「すみません、要らないレコードがあったら売って下さい」と回った(canvassingというらしい)という強者なので、本作ジャケを描くにはこれ以上ない適任者。
"究極のコレクター"として、荒木 飛呂彦+鬼窪 浩久の『変人偏屈列伝』にも出てくるコリヤー兄弟が挙げられているのも面白かったです。
自分はブルースのマニアじゃないから...と尻ごみしてしまう人もいそうですが、本作を出発点として、本格的にブルースの魔界に足を踏み込んでいっても良いと思います。